■供述
検審が審査した小沢氏の容疑内容は、(1)元会計責任者の大久保隆規被告(48)、石川被告と共謀し、陸山会が平成16年10月に約3億4千万円で東京都世田谷区の土地を購入したのに、同年分の政治資金収支報告書に記載しなかった(2)大久保被告、池田光智被告(32)と共謀し、土地代金などを支出として17年分の収支報告書に虚偽記載した−の2点。
検審が、小沢氏と3人の共謀を認定できる「直接証拠」として挙げたのが、石川、池田両被告の供述だ。議決によれば、2人は収支報告書を提出する前に「小沢氏に報告、相談した」(石川被告)、「小沢氏に説明、了承を得た」(池田被告)と供述した。
議決では2人の供述を短く触れただけだったが、関係者によると、石川被告は土地代金の原資となった4億円を記載しないことや、土地の登記を翌17年にずらすことを小沢氏に相談し、了承を得た−とも供述したという。
捜査でもこの供述が最も重視された。だが、小沢氏の指示など積極的関与を示す供述は得られず、特捜部は「共犯として有罪を得るだけの証拠は認められない」と小沢氏を嫌疑不十分で不起訴処分とした。
元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝氏は「一般市民の感覚では、共謀が成立すると考えたのは十分に理解できる」と前置きした上で、こう指摘する。
「たとえ翌年度に土地登記をずらすことを了承したとしても、検察は虚偽記載自体について、より密接な相談や承認がないと難しいと考えたのではないか」
■判例
「共謀に関する諸判例に照らしても、絶大な指揮命令権限を有する小沢氏の地位と元秘書らの立場や状況証拠を総合考慮すれば、共謀共同正犯が成立するとの認定が可能である」
検審が議決でこう指摘したように、小沢氏の共犯が成立すると判断した根拠の一つに、共謀に関する過去の最高裁判例がある。
関係者によると、検審では、暴力団組長が拳銃を持たなくても、銃刀法違反(共同所持)罪の共謀共同正犯に問われた判例が参考にされたという。
最高裁第1小法廷は15年5月、ボディーガードの組員に拳銃を持たせたとして銃刀法違反罪に問われた暴力団組長の上告を棄却、実刑判決が確定した。暴力団組長が組員らに拳銃携帯を具体的に指示した事実はなかったが、組長が指揮命令権を持つ地位にあったことなどから、「被告が拳銃を持つよう直接指示しなくても、組員が自発的に警護のため所持することを容認していた」と認定した。
若狭氏は「暴力団の場合は組員が命をかけてまで親分を守るという相当のつながりがあるが、政治家と秘書の場合はそこまで強いといえるのか」と疑問を呈する。しかし、ある法曹関係者は「同様の裁判例は企業犯罪などでもたくさんある。政治家だけが特別なのか。検審はそれを問いたいのだろう」と語った。
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